入場

会場がすこし遅れる。
列について待っていると、人の叫び声がして、「だれか、タンカ、もってこーい」の声。
「どうしたんですか?」
と聞くと、「いつものことだよ、待ちきれなくて、暴れるヤツがでるんだ、きっと赤色人だぜ」と、説明してくれた。
なるほど。ゲスト・オブ・オナーが火星のエライ人らしいから、興奮するんだろうな。
ようやくとりおさえられたのか、檻のついた馬車が勢いよく走っていった。
鉄格子の中から、緑色の左手とか、白い毛皮の足とか、大きな目玉とかが突き出ていた。
「今回の大会は火星人が多いね」と話し声がする。同感だ。
前の方で、「カオール、カオール」というので、自分もヘリウムの旗をデイパックから出してふってみる。火星の大元帥閣下がご光臨遊ばしたらしい。
でも、ひとだかりでぜんぜん見えないよ。
檻のついた馬車が三台入り口のほうへまた走っていったが、開場したらしいので、それどころじゃない。