小谷真理解説本サーベイ8

傑作とは、時代を超えるなーと読み返しながら思う。


ゴルディアスの結び目 (ハルキ文庫)

ゴルディアスの結び目 (ハルキ文庫)

子どもの頃、夢中で読みふけった名著。当時圧倒されたけれども、その正体がなんであるのか、ことばではうまく説明できなかった。もはや若くはない年頃になって再考する機会を得るということは本当に貴重なことと思う。復刊されてよかった。
その喜びをストレートに表明した解説のタイトルは「サイエンス・フィクションのほどきかた」。なお、「ゴルディアスの結び目」は、萩尾望都氏が『バルバラ異界』を創作するに当たってインスパイアを与えた作品だったと聞き、彼女の批評的な読解の深さに驚かされた。



幻覚の地平線 (ハルキ文庫)

幻覚の地平線 (ハルキ文庫)

「閉ざされた水平線」の魅力にとりつかれた女子はさぞ多いことだろう。故・栗本薫氏もそうだったと聞いた。
解説では、田中光二氏をウィリアム・ギブスンの同時代人として、サイバーパンクSFとの共時性を指摘している。



戦争を演じた神々たち(全) (ハヤカワ文庫JA)

戦争を演じた神々たち(全) (ハヤカワ文庫JA)

高度情報化社会になにが起こりうるかをあらかじめ予見するかのように描かれた、美しい寓話集。
その先見性には驚嘆すべきものがあったと、21世紀に読み直してもなお切実に感じられる。1995年日本SF大賞受賞作品。



驚愕の曠野―自選ホラー傑作集〈2〉 (新潮文庫)

驚愕の曠野―自選ホラー傑作集〈2〉 (新潮文庫)

自選によるホラー短篇集ということで、解説ではホラー・アンソロジストにしてホラー理論家たる井上雅彦氏のホラー論(日本SF作家クラブ編『SF入門』(早川書房、二〇〇一年)所収、114-117)をひきながら、筒井氏の恐怖の理論的解答について思索している。ホラーをめぐる架空対談にも見え、面白い。




猶予(いざよい)の月〈上〉 (ハヤカワ文庫JA)

猶予(いざよい)の月〈上〉 (ハヤカワ文庫JA)

猶予(いざよい)の月〈下〉 (ハヤカワ文庫JA)

猶予(いざよい)の月〈下〉 (ハヤカワ文庫JA)

姉弟の近親相姦のロマンスをロジカルに探究してみると、それは既存の物語学の枠をやぶって、時空間をも凌駕する騒動に発展してしまう、というリリカルでダイナミックなストーリー。SFマガジンに連載当時から、氏の性差SFとして注目された。
理系ロジックがジェンダー理論にどのように発揮されるのかが読みどころ。